溺愛男は恋愛初心女の恋を惑わせる
「安西さん、こんにちは。今日はどこか体調でも?」

「いえ、父から院長先生へお届けものを預かってまいりました。
先程までお伺いして、これから帰るところです。」

安西さん家のお嬢さん、名前までは知らない。
同じ附属校出身で年も随分下だから、ほとんど面識もない。
昔、パーティーで見かけた頃はまだ高校生くらいだった。
今はいくつくらいか、随分幼く見える。
親の言うことを聞く、いい子ちゃんタイプ。

「それはご苦労様です。では失礼。」

「あの、お昼まだでしたら、ご一緒にいかがですか?」

「あいにく、仕事が立て込んでて、失礼します。」


大人しそうに見えて、積極的だな。
近寄らないのが一番だ。
親父にも玲奈のこと早く紹介しよう。





この時は忙しくて、会えないだけそう思っていた。
メールのレスも短くても来ていたし。
でも、まさかあんなトラップがしかけられていたなんて、気づいたのはしばらく
経ってからだった。
< 135 / 280 >

この作品をシェア

pagetop