溺愛男は恋愛初心女の恋を惑わせる
ドアを開けると彼が怒っているのか、悲しんでいるのか分からない顔で現れた。

「久しぶり。さっきのメール見た。」

この空気に耐えられそうになくて、取り繕う。
距離をどうとればいいのかわからない。

「あっ、ちょっと忙しくてね。時間無さそうだったから。
今日はわざわざ来てくれたんだ。ごめんね。」

そういうと、いきなり腕を引き寄せられ、抱きしめられた。

「ごめん、不安にさせて。会えないなんて嫌だからな。もうこのまま離れてやらない。」


そう言われ、涙が溢れた。


彼は私を横抱きにしてリビングのソファに腰掛けた。

ずっと抱っこされたままだ。
ずっと、黙って抱きしめてる。
沈黙が苦しいけど、涙は止まらなくて、泣き顔を見られたくなくて、彼の首に引っ付いていた。
どれくらい経っただろうか。彼が声をかける。

「玲奈、話して。どうしてか知りたい。涙の理由教えて。ちゃんと答えるから。」

頭を撫でながら、子供を諭すように優しく耳元でささやいた。

また、涙が溢れた。
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