溺愛男は恋愛初心女の恋を惑わせる
到着ロビーを出て、タクシーで実家へ帰るつもりだった。

荷物を受け取り到着ゲートを出ると母国に帰ったと感じる。

移動で疲れていたから、少し油断してた。

すると出たところで声をかけられた。

「玲奈…」
声の方へ向くと、大好きな彼だった。
どうして…。
久しぶりに見る彼は少し痩せていて、でも相変わらずカッコよくて。
誕生日にあげたネクタイをつけていた。

どう反応していいかわからない私は会釈をして立ち去ろうくらいしか頭になくて、
大きなスーツケースを引いて、その場をやり過ごすつもりだった。

「迎えにきた…。離さないよ。おいで。」

優しい声が魔法みたいで逆らえないまま荷物を取られ、右手はしっかりと手を繋がれて。
そのまま、彼のクルマに乗せられた。

何も話さないまま空港の駐車場で、
「強引でごめん。来てくれる?」

逃げるように日本を出て行った私に、彼は納得していなくて怒っているのだろう。
向き合わなければ彼の中で終われないのかもしれない。
きちんと終わらせていたら、彼の数ヶ月は前進できたのかもしれなのに…。
私の行動が浅はかだったと気づいた。

向き合わなければ。
私はコクンと頷いた。
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