溺愛男は恋愛初心女の恋を惑わせる
空港から向かったのは、二人でいつも過ごしていたオレのマンション。

荷物はクルマに入れたまま、逃げないように。自分でもズルイって思う。

酷いことはされないと、そこは信用されているのか、エレベーターに乗ってる間もずっと
手を繋いで、玄関に入っても離さなかった。
ショートブーツを玄関で脱ぐときに、ごめんと言って振りほどいた手。
靴をきれいな所作で揃えている姿に抱きしめたくなるのを堪えた。

知ってる部屋の間取りへすんなり入って、ソファに座らせ、紅茶を入れた。
彼女が好きな茶葉だ。

緊張していた顔が紅茶を一口飲むと綻んだ。

ゆっくりと時間をかけて話しがしたい。

スマホを取り出し、メールをしていい?と許可を得る。
人前できちんと場をわきまえるのも彼女の良いところだ。
「マックスに。実家にいると思うの。ちゃんと日本到着知らせておきたくて。」

携帯をカバンへしまったのを見てから、言葉をかけた。

「ごめん、強引に連れて来て。怖くない?」

ううんと首を横に振った。

「あのさ…」

話しだそうとした時、彼女が言葉を遮った。

「あの、ごめんなさい…。中途半端に別れてしまって。一方的だったとも思ってる。
連絡も無視して…。前に進みにくいよね。

だから…もう自由に、なって…。好きにしていいんだよ…。」

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