溺愛男は恋愛初心女の恋を惑わせる
白衣を着た玲奈は子供達に囲まれておしゃべりをしていた。
年末に入院している子供達はほとんどが病院でお正月を過ごす。
元気そうに見えて、重篤な子も多い。突然変化があることも。

ベテラン小児科医長がオレの横にこっそりやってきた。
玲奈に昨日の患者さんの診察をしてもらったそうだ。

「昨日、救命から来た子供達は彼女が処置したって?いい子だね。カルテ見たけど、
細かいところもよく気がついてる。オペ術もすごいね、まだ若いのに。
それで、町の医院でバイトしてるって。もったいなくないか?」

「そうですね。今、事情あって本来の職場を休職してるんですよ。
クリニックでも楽しく働いてますよ。」

「うちに来てもらったら病院も助かるだろうに。亮先生って院内恋愛反対派だったかな?」

「さあどうですかね。とにかく彼女は純粋に患者さんに向き合うので、
変な虫がこないようしっかり見張ってて下さいね。」

「ハイハイ。キミも心配性だな。ははは。」


向こう側で子ども達にニコニコおしゃべりしてる玲奈はとても生き生きしていた。
こどもにおねだりされて、院内学級用の電子ピアノに座ってピアノを弾いている。
子どもたちはキラキラした目で嬉しそうに聞いていた。

ナースや親たちも笑顔だ。

すごいな。医療って技術だけではない。
心のケアも必要だ。子どもならとくに。
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