言葉にならない愛を、君に
本当は、覚えてた。
なにがあったのかも、どうしてここにいるのかも。
あのとき、階段から落ちていくときにみえた芹沢さんの姿。
その顔は、誇らしげで、でもどこか寂しそうな、そんな顔にみえた。
なぜかわからないけど、その顔をみたときわたしは芹沢さんがわたしを突き落としたことなんてどうでもよくなった。
あのとき、廊下にも誰もいなかったから芹沢さんがわたしを突き落としたことはばれてないと思う。
だからわたしは何も覚えていないふり、をすることにしたんだ。
「まあいまはしっかり休んで。明日学校で待ってるから」
「はい、ありがとうございました」