言葉にならない愛を、君に
「別に死んでもよかったのよ。てかむしろ死んでくれなくて残念」
「・・・本気でいってるの?」
「ええ、本気よ。わたしいつだって本気よ」
俺は気づいたら梨花子にとびかかっていた。
右手に握りこぶしをつくり、今にも梨花子を殴ってしまいそうで。
「だって、ずるいじゃない、あの子」
でも急に梨花子がそういって泣き出すから、俺はそのまま動けなくなった。
「こんなにも自分を想ってくれる人がいて、幼なじみがいて、友達がいて、家族がいて、何不自由なく生きてきた、愛されてきた、そんな子。なにがあってもまわりが守ってくれて、大事に大事に育てられてきた子。
わたしとは正反対、だから嫌い」
「梨花子?」
「わたしはね、誰からも愛されてこなかった。みんな上辺。過去を知ってる子はみんなわたしを哀れんだ目でみた。誰もわたしを友達としてみてくれなかった。だからわたしは上に立つ人間になった。そうすれば下の子はみんなわたしに従ってくれたから」
「・・・過去?」
「そう。この前勇也くんが家にきたときにいた女の人、お母さんじゃないから」
「え?」
――「・・お母さんたち?心配?ふざけないで、あんなのお母さんでもなんでもないから」
たしかにあのとき梨花子はこういっていた。