言葉にならない愛を、君に
「お母さんちょっと雅也とでかけてくるから、お留守番お願いね」
「わかった」
中学2年になってすぐ、まだ桜が満開に咲いていたころ、お兄ちゃんの誕生日が近くてその買い物にいくとでかけていった。
そしてそのまま2人は帰らぬ人となった。
そのときの葵は、みていられなかった。
泣くわけでもなく、抜け殻のように桜の花びらが落ちていくのをずっと眺めていた。
毎日のように、何時間も。
「どうして、こうなったの?これからも、一緒にいられるって思ってたのに、なんで?」
葵は何度も何度もそう口にした。
そのたびに俺はこういった。
「俺はずっと葵のそばにいる。ずっと一緒にいる。絶対葵から離れないから」
そういうと葵は安心したように眠った。
大切な関係になればなるほど、失ったときの代償が大きい。
だから決めたんだ。
幼なじみという関係のまま、葵のそばにいることを。