言葉にならない愛を、君に
「今日だけ、わがまま。これで終わりにするから、だから家まで手つないでてほしい」
「わかった」
でも聞けなかった。
いまは航ちゃんとの時間を大切にしたかったから。
「葵、これからは幼なじみとしてまたよろしくな」
「もちろんだよ。航ちゃんとはずっと一緒にいたいよ」
「それ、反則。勘違いするから、だめ」
「えー」
「あはは、嘘。ありがとな葵」
「どういたしまして」
付き合ってからの何週間かはなんとなくお互い遠慮してるというかぎこちなかったけれど、今は普通に話せてる。
こっちのほうがやっぱりいい。
「じゃあ、また明日ここに集合な」
「うん、また明日ね」
繋いでいた手を離した。
そして航ちゃんの笑顔に、わたしも笑顔で手を振った。
久々に、素直に笑うことができた気がした。