気づいて
••こんな私で
波打ち際について
髪をおさえながら
海を見ている彼女に
「海は、好きですか?」
と、訊ねると彼女は首をふりながら
「そういう わけではないのですが。
なんだか、すごく久しぶりに
きたから、嬉しくて。」
「そう、それなら良かった。」
「はい、連れてきて頂いて
ありがとうございます。」
と、ニッコリ笑いながら言う彼女に
「いつでも、どこにでも
連れて行ってあげますよ。」
と、言うと
彼女は、びっくりした顔を
俺に向けるから
「莉央さん。
私と結婚を前提に
お付き合いをして下さい。
今日あったばかりで
何を言っていると
思われているかも知れませんが
もう、貴方のような方と
これから先、出会うことはないと
思います。
だから、この機会を逃したくない。」
と、自分の気持ちを素直に伝えた。
彼女は、目をクルクルさせていたが
「桂木さん、いえ、凌平さん
少しだけ、私の話を聞いて頂いても
宜しいですか?」
と、言う彼女に俺は頷いた。
「私は、11年間、ずっと片思いを
している人がいます。
だけど、
どんなに頑張っても彼の横に
たてることはありませんでした。
だから、彼の友達というポジションで
満足していましたが
もう、私も29才
いつまでも不毛な片想いを
していて良いわけではないと思い
このお見合いを受けました。
もし、本当に凌平さんが
こんな私でも良いと
言われるのでしたら
お付き合いさせて下さい。
いや、こんなバカな女は
ごめんだと思うのでしたら
はっきりとそう言ってください。」
と、言うと彼は
クスクス、笑いながら
「正直な方だ。
やっばり、俺は莉央さんがいい。
そんなに長く想われている彼に
嫉妬もしますし面白くもないが
そんな彼が羨ましい気持ちの方が
大きい。
俺は、負けないよ。
莉央さんから彼以上に
好きになって貰えるように
頑張るから。」
と、伝えると
彼女は、真っ赤になりながら
綺麗な涙を溢した。
本当に海からの反射で彼女の涙は、
キラキラしていた。
俺は、自分のハンカチで
彼女の涙をそっと拭きながら
彼女を自分の胸の中におさめた。