気づいて
••目覚め
仕事が終わり
伊織の病室に行く
凌平さんに会えるかもと
思っていたが、会うことはなかった。
伊織の病室から話し声がして
“コンコン”
“はい、どうぞ”
伊織は、ベッドに座っていて
お母さんと話をしていた
「莉央っ」
「莉央ちゃん、来てくれたの?」
「伊織、良かった。
私をかばってくれて
ありがとう。」
と、頭を下げると
「そんなカッコ良いもんじゃない。」
と、笑ってくれた。
「莉央ちゃんは、昨日無事に帰れた?」
と、伊織のお母さんに言われ
あの血だらけの洋服だったから
心配されたのだと分かり
「はい、大丈夫でした。
タクシーの運転手さんが
少しギョッとしていましたが。」
と、言うと
伊織は、なんのことかわからない
顔をしていたので・・
お母さんが説明すると
今度は心配していた。
それからは、営業課長が午前中に
来た話を伊織がしてくれた。
お母さんは、
四、五日は伊織のそばにいて
帰ると言った。
私も
「お手伝いさせて下さい。」
と、言ったら
「今から、伊織の部屋に着替えを
取りに行ってくるから
その間だけ頼んでも?」
と、言われて
「はい、大丈夫です。
お母さん、食事やお風呂を
ゆっくりされてきて下さい。」
と、伝えると
「助かるわ。」
と、言って病室を出ていった。
お父さんは、今朝病院にきてくれて、
その後会社に行って
自宅に戻ったと
伊織が話してくれた。
二人になり、私は改めて
「伊織、本当にありがとう。
怪我をさせてしまって
ごめんなさい。」
と、頭を下げると
「たいした、怪我ではないし
莉央が気にすることはない。
だけど、あの日以来
話しもできなくて悪かった。
・・・・・・・・
あの日・・・
俺・・・・
・・・・莉央を抱いた?」
と、言われて
莉央は、嘘は言えないと
コクンと頷くと
「ごめん、本当にごめん。」
と、頭を何度も下げる伊織に
「忘れて、私も忘れるから。
伊織は、山口さんの事だけを
考えて。」
「だけど・・・・」
「いいの、本当に。
私ね、実は、大学に入ったとき
伊織にハンカチを拾ってもらってから
ずっと、伊織が好きだった。
でも、伊織は私を女として
ではなく、友達としか
見てなかった。
もう不毛な片想いをやめようと
お見合いをして凌平さんに
出会ったの。」
「・・・・えっ・・」
「ごめんね、びっくりしたよね。
でも、何も気にしないで。
私が勝手に想っていただけだから。」
「本当にごめん。
俺、何て言ったら・・」
「だから、もういいって。
はい、この話しは終わり。」
と、言うと
伊織は、何か考えこんでいたが
私は気にせずに山口さんの話しや
大学の友達の話をした。
少しすると伊織のお母さんが
戻ってきた。
伊織の彼女である
山口さんは、仕事で他県に行っている
そうだ。
彼女の仕事は、アパレルの仕事らしい
だから、可愛く服や顔も可愛いだ
と、改めて思った。
「私に出来る事は、何でも
言ってください。」
と、伊織とお母さんに伝えて
伊織の病室を後にした。
伊織との会話を
凌平さんが聞いていたなんて・・・