気づいて

••近くにいたい


凌平は、電話を切ってから
しばらく、考えていた。

彼女は、どんな気持ちで
あの子を産んだのだろうか

授かった命を
大切にしたかっただけ
かもしれない

あの時、莉央に嘘をつかれた
事へのショックに
若い頃の痛みが伴い
別れの選択をした。

あれから、誰の事も
目に入らず、仕事だけに
勤しんできた。

見合いの話や
紹介の話しはあったが

やはり・・想うは・・
莉央・・だった。

大人の許容で
包み込む事が出来ずに
手放した莉央を
もう一度、取り戻す事が
できるだろうか?・・・・

翌日、カンファレンスも無事に済み
俺は、恩師に
「先生、私をこちらの病院で
雇っては、頂けませんか?
患者さんが、と言う大それた事では
なく、私個人がこの地に
いたいのです。」
「あはは、本当に君は、
相変わらずの正直ものだな。
君、みたいな優秀な外科医が
来てくれるなんて大歓迎だよ。
早速、事務長に話を通すよ。」
「ありがとうございます。
宜しくお願い致します。」
と、頭を下げた。

あちらの病院との
兼ね合いもあるから
早々と言うわけには
いかないが、なるべく早く動きたい。

住まいは、この病院の医師が
住んでいるところに入り
落ち着いてから、住まいを探す事にした。

早田総合病院の院長にも
先に電話で話をして
詳しくは、戻ってからとなった。

莉央と、うまくいく、いかなくても
莉央と凉太のいるこの地にいたいと
思った。
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