気づいて

••好きだ


“ピンポーン”・・来客をつげる
「おばあちゃん?」
あれ、いないのかと
莉央は、玄関に向かう
凉太は、おもちゃで遊んでいた。
「はぁ~い」

玄関を開けると・・・

「えっ・・凌・・平・・さん?」
「こんにちは。」
「えっと、こん・・にちは・・」
クスクス、笑う凌平さん
「少し、話しできる?」
「ええっと、今、おばあちゃんが
いないから、ちょっと、待って下さい。」
と、中に入り凉太を抱いて
玄関に戻ると
凉太は、凌平さんを見て
きゃっ、きゃっと言いながら
手を差し出した。

凌平さんは、私の顔を一度見て
凉太を抱きあげた。

凉太は、手を凌平さんの頬にあてて
笑った。
「ほぉ、凉太から手を出すなんて
やはり、血は争えんか。」
と、おばあちゃん。
「あっ、おばあちゃん?
なっ、なんてこと」
なんでしゃべっちゃうかな
と、莉央はヒヤヒヤしていた。
「凉太、ばあちゃんにおいで」
と、言って
凉太を抱きながら
「話しあるだろ、ゆっくりしておいで。」
と、言った。

凌平さんは、おばあちゃんに
頭を下げてから
莉央を連れ出した。

少し歩くと公園がある。
凉太を散歩に連れてくる公園だ。
「良い所だね。」
「はい。でも冬は寒いですよ。」
「そうだよね。」
「凌平さん、どうして・・・
「莉央が居る所が、わかったか?

それは、洋子さんに聞いたから
と、言うか、脅したのかな?」
「えっ、ええ、脅した?」
「まぁね。あの時の事を引き合いにね
ごめんね、突然来て。」
と、言って、あの病院に恩師がいて
カンファレンスに来た
事を伝えると

「そうだったのですか?
今日、明日には帰るのですか?」
「ああ、明日ね。
莉央、俺は嘘は嫌いだ。

それは、知っているよね
だから、単刀直入に聞くよ
あの子、凉太は、俺の子?」
「・・・・・・・
‥‥‥は‥‥‥いっ‥‥‥‥ごめんなさい。
勝手に産んで‥‥‥‥
でも、凌平さんに知らせるつもりも
知って貰おうとも、思っていなかったの
ただ・・・」
「ただ?」
「ただ、あの時、愛しあって
授かった命を大事に、大切にしたかった。」
と、うつむく莉央に
「ありがとう。凉太を産んでくれて」
と、凌平に言われて
顔をあげた莉央の目には
涙がいっぱいたまっていた。

そんな莉央を凌平は
抱き締める。

抱き締められて莉央の瞳からは
ポタポタと涙が落ちていった。

抱き締めてから
一度、離れて
莉央の涙を親指で拭いたり
ハンカチで拭いたりする凌平
「中々、止まらないね」
と、苦笑いをしながら莉央に
あの時、寛容に対応出来ずに
莉央を手放した事を謝り
一人で凉太を産んで
ましてや早産で、不安な思いを
させてしまった事を詫びた。

再び、再会しなかったら
知るよしもなかった我が子
怖いようにも思うが
やはり、再会したのは
そうなる運命だと、強く思う

「莉央、少しでも
俺を想う気持ちが残っているなら
俺とやり直して貰えないか?
俺は、莉央と凉太と
一緒に居たい。」
と、言った。

莉央は、あの時の話をした。

伊織の事は、自分の中で
あり得ない事だったから
あえて話す必要もないと
勝手に思っていた事

でもそれは、自分の勝手な解釈で
凌平さんが同じ事をしたら
許せるのかと親友に言われて
事の重大さに気づいた事

凌平さんの事は
本当に愛していたし
凌平さんと過ごして伊織の事は
自分の中で友人となっていた
だけど、こんな中途半端な
私では、凌平さんに去られて当たり前で
伊織が快復してから
きちんと気持ちを話した。
今は、もう、友人としか
思っていないことも含めて
「私が、中途半端だったから
凌平さんに辛い思いをさせて
しまって、本当にごめんなさい。
わたし・・わたし・・・

「莉央、ありがとう。
愛し、愛されてるとわかっていたのに・・
俺の醜い嫉妬だったんだろう。」
「そっ、そんな事ない。
凌平さんと離れてから
ときめきもなくて
このまま、おばあちゃんになって
いくんだと思っていた。」
と、言うと
「クスッ、それは、困る。」
と、言いながら
また、莉央を抱き締め
「莉央、好きだ。」
と、言ってくれる凌平さんに
莉央は、きちんと気持ちを伝えたかった
「私も、凌平さんが好きです。」

そんな莉央に凌平は、
優しくキスをした。

離れては、またキスを
繰り返しながら
二人で笑いあった。

「莉央、再会した病院に
勤めるから、こっちにくるまで
待っていてほしい。」
「ええっ、本当に?」
「ああ、昨日、話をつけた。
早田総合病院の方があるから
直ぐには、いかないけど
早々と動くから。
住まいは、こっちに来てから
決めるでよい?」
「展開が早くて、ついていけない。」
「そうか?じゃ、おばあ様のとこに
戻って、凉太を抱かせて。」
と、言って莉央と手を繋いで
おばあ様の家に帰った。
< 44 / 51 >

この作品をシェア

pagetop