音楽のほとりで
「それじゃあ、僕は大学に用事があるので戻りますね。年度末は忙しくて大変です」
腕時計で時間を確認した奏音は、惜しそうな表情をして4人に挨拶をする。
「今日は聴きに来てくださってありがとうございます」
尚は、深々と頭を下げると、奏音はそれに対して頭を上げるように言い、2人は固い握手を交わした。
「じゃあ、皆さん、また会いましょうね」
「ぜひ」
奏音は、再び礼をすると1人先に楽屋を出て行く。
その後ろ姿からは、前をまっすぐ見て歩く奏音の姿が想像できた。
「桜は、フランスに行く用意出来てる? 一緒にフランスに行ければ良かったけれどどうしても外せない用事があって」
「大丈夫だよ」
「向こうの空港で待ってるから」
「うん」
桜も、頃合いを見て楽屋を後にした。