音楽のほとりで
「桜さん、こっちです」
桜と尚が公園に着く頃には、既に2人の姿がそこにあり、秋のちょうど良い朗らかな日差しが当たる芝生の上に座っている。
「お待たせしました」
「今日も、いい天気ですね」
大抵、桜と南から会話を初めて、その後にマイペースに尚とルイが話し出す。
今日も、いつもと変わらずにその順番を守っていた。
「今日は僕、アップルパイを焼いて来たんだ」
「なんか、ルイ、ピアニスト兼料理人になれそうだね」
皆に料理を振舞ったあの日から、ルイはそのきらきらとした表情が忘れられずに、料理を毎日するようになり、今では音楽をやる合間にお菓子を作るようにもなった。
「料理と音楽は似てるよ」
「まあ、確かに」
それは、女同士が話している方が自然な内容で、桜と南はその会話を聞きながら笑っているが、どこかで男に負けているという敗北間も感じていた。
「よし、じゃあ、食べましょうか」
「今日のバックミュージックは?」
「『愛の挨拶』で!」