音楽のほとりで

特に何も話すことなく、家の前に着いてしまう。

「じゃあ、また」

「うん」

尚はいつものようにバイバイと手を振って行ってしまった。

桜も家の扉を開けようとした時

「あ、待って」

そう呼ぶ尚の声が聞こえてくる。

「これ、この前のパリでのコンサートCDなんだけど、桜にあげる」

「いいの?」

「うん。じゃあ、また」

「あ、ありがとうっ」

すると、尚は再び行ってしまった。

桜は、家の中に入るなりすぐに自分の部屋へ行ってそれを確認した。

袋の中を見てみると、CDのほかにピアノ柄のハンカチが入っている。

そこには、刺繍で『Sakura』とピンク色の名前が書かれていた。

「尚……」

CDのケースには付箋があり、それには『そういえばパリでこのハンカチ見つけて桜に買ったんだけど、今まで渡すの忘れてた』と書いてある。

桜は、棚に置いてある少し大きめの木箱を持って机に置くと、その箱を開けた。

それには、今までに尚からもらった様々なものが入っていた。
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