音楽のほとりで

「桜、夜はどうする?」

尚のピアノを聴いて、特に何をすることなくのんびりと過ごしていたら、あっという間に夜になってしまう。

ちょうどその時、桜のお腹が鳴る音が部屋中に響いた。

「食べに行こっか」

「うん……」

桜は、それを言うと顔を赤くした。

それに対して、尚は馬鹿にするような態度は取らずに、優しい目で桜を見ていた。








どこのお店がいいかと街の中をぷらぷらしている2人は、いい香りのするお店に引き寄せられる。

店に入ると、尚はその空気を肺いっぱいに吸い込んだ。

「んー、日本って感じだ」

ソースの匂いが充満するそこは、2人の食欲を引き立たせる。

壁に貼られてあるメニューを見て、お互いにどれがいいのかを言っていくことにした。

「僕は海鮮のやつにしようかな」

「じゃあ私は、チーズとタラコのにしようかな」

「うん、それも美味しそうだね」

2人がお互いに決めたタイミングで、このお店のおばちゃんが注文を聞きにきた。

そしてまず、尚の顔を見る。

「あらあ、綺麗な人ね」

その後に桜の顔を見る。

「あなたもべっぴんさんねえ」

「いえいえ、そんな」

おばちゃんは、ふふふっと言って2人に何を注文するのかを尋ねた。

そうして聞き終わると、また2人の顔を見て

「お似合いだわあ。いいわねえ、ゆっくりしていって」

と笑いながらおばちゃんは別の席に行った。
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