音楽のほとりで
パンと林檎と共に、再び2人は公園に戻ってきた。
見ると、運が良く先程の木の下がまだ人がいないと分かると、そこに行き芝生に座るなり早速買ってきたパンを味わう。
焼き立てであろうパンは、噛むとパリッと音を立てる。
パンが口の中に入ると、その風味が広まる。
「南さんは、お米が恋しくなったりする?」
パンを食べながら、米の話をする2人は、なんだか少しおかしかった。
「もちろんですよ。お寿司とか天丼とか、そういうのが無性に食べたくなります」
「僕もだよ。日本食レストランもあるけど、なんか違うんだよね」
「ですよね、洋がミックスされちゃってますよね」
「そうそう」
尚は、笑ってそう話す。
南の話し方が、ツボに入ったようだ。
「でも、もちろんパンも好きですよ。やっぱり
ヨーロッパのパンは日本に比べられないくらい美味しいです」
「うん、ヨーロッパにはヨーロッパの、日本には日本の美味しいものがある。ヨーロッパのお寿司はイマイチでも、パンは絶品だ」
「そうですね」
「音楽もそう。その人ならではの音があって、十人十色だから面白い」
「私もそう思います」
そして一旦会話を終えた2人は、無心にそのパン食べる。
暫くしてパンを食べ終えた尚は、次に袋から林檎を取り出してそれを拭くと、まん丸の林檎をその形のままかじって食べ始めた。
「僕、初めてフランスで林檎を丸かじりしながら歩いている姿を見た時に驚いたんだけど、今ではそれが普通になっちゃったよ」
周囲の公園にいる他の人たちも、同じように林檎を食べている。