音楽のほとりで

東京では、桜が街をピンク色に染めている。

そのピンク色で染められた土地で、それを見ている男女の姿があった。

「毎年見てますが、やっぱり奇麗ですね」

「春と言ったら桜ですよね。あと、桜を見ながら食べる串団子も」

桜は、その桜色の花びらを見ながら頭の中では甘い和菓子のことを考えていた。

「ああ、そうですね。花より団子ですよね。気が利きませんでした。今から買ってきます」

「そ、そんなつもりで言ったんじゃ」

と、桜はどこかに行こうとする奏音を引き留める。

「ははっ、分かってますよ」

「もう、意地悪ですね」

「でも、本当にお腹が空いてきたので、買ってきますね」

「待ってください、私も行きます」

奏音と桜は、桜で有名な場所に花見をしに来ている。

そこは、さすが日曜でということもあって、人で溢れかえっていた。

横一列に並んでいる屋台の中の一軒の団子屋に着くと、奏音は足を止める。

ニュースでも特集されるほど人気の屋台だ。

「並びますか」

「そうですね」

2人が並んでいる屋台では、桜餡の団子があり、どの団子も人気であるがそれが1番の人気だった。

甘じょっぱい餡は、子供からお年寄りまでどの世代にも受け入れられて人気がある。

「花より団子って、本当に的確な言葉ですよね」

「花を見ながら食べる団子は、別格ですからね」

桜は、花よりも団子という意味で言ったが、奏音の別の解釈を聞いてなんだか恥ずかしくなってしまう。

「たしかにそうですね」

「2本で大丈夫ですか?」

「あ、はい」

桜が恥ずかしがっている間に、2人は先頭に来ていた。

人のよさそうな顔をしたおばあちゃんが、笑顔を絶やさずにそれを売っている。
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