音楽のほとりで
桜は、家に帰ると1番に美鈴に今日のことをメールで報告した。
奏音に告白されたこと、そして付き合うことにしたことを。
桜は、返信を待つ間にあの尚との思い出の詰まった箱をそっと持ち上げて、クローゼットへと移動させると、その扉をゆっくりと閉めた。
その箱を置いていた棚には、ぽっかりと空間が空く。
桜はそれを埋めようと部屋の中にある鏡をそこに置いてみたが、どうもしっくりとこない。
他にも、写真など色々なものを置いてみるも、やはりどこか違和感があって、結局そこを何かで埋めることを諦めた。
そんなことをしている間に、美鈴から返信が来ていた。
そこには、ただ一言『おめでとう』と記されている。
その文字を見て、桜はどこかスッキリしないような、心がもやもやする感じを覚えた。
何故だろうか、美鈴の返信があまりにも短いからであろうか、それともその『おめでとう』と言う言葉自体にその感じを抱いているのだろうか……。
桜は自分の中にあるその感情を無視して、『ありがとう』と返事をした。