音楽のほとりで
「尚さん、無事終わって良かったですね」
パリに向かう飛行機の中、2人は機内食を食べながら話していた。
2人から少し離れたところに、それぞれのマネージャーが座っていて、2人の会話は全く聞こえていない。
「うん、そうだね」
「それに、桜さん無事で良かったですね。私も心配しちゃいました」
南は眉毛をハの字にする。
「そうだね……南さんは、何か桜と話した?」
「いえ、楽屋に来て急に顔色が変わって出て行ってしまったのしか……私何かしちゃったのかな……」
「いや、桜は何も言ってなかったし……。それより、なんか日本食たくさん買ってたね」
「はい、パリで買うと高いし売ってないものもあるので、せっかく日本に来たしと思ってたくさん買って送っちゃいました」
「そっか」
この前のパンやリンゴといい、今回の日本食といい、尚には到底南が1人でそれを食べていると想像できなかった。
「南さんって、…………実はたくさん食べるとか?」
「人には驚かれるんですけど、結構食べるの好きなんですっ。美味しいものならなお」
そう言い、パンを一口食べてワインを飲む。
「楽器弾くのって、結構疲れますよね。だからその分食べないと」
「うん、確かにそうだね」
暫くすると、機内が暗くなり2人はどちらからともいわずに眠りに落ちた。