音楽のほとりで
数十分、そのスープを煮込むと南はその火を止めた。
コンソメの香りが部屋の中に漂い、食欲をそそる。
一本の長いバゲットを食べやすい大きさに切ると、それを可愛らしい小さい籠に入れて、ルイの待つテーブルへと運んだ。
「美味しそうだ」
「いつもそんな風に言ってくれてありがとう」
2人は、出来てたのスープを口の中に入れる。
2人の間には、笑顔があった。
その南の笑顔は、尚と会った時のようなどこか無理したものではなく、自然と口元が緩み、安心しきったものだった。
その表情からは、嘘という文字は一切見えない。
「南、僕ちゃんと立ち直るから」
「うん」
「だから…………」
その後の言葉を、ルイは言おうとしなかった。
その代わりに、眉尻を下げて何かを南に訴えているようだった。
「大丈夫」
ルイのその顔を見ると、南はただその言葉をルイに投げかける。
ルイは、どこか弱弱しく遠慮がちな目を南に向けて、きゅっと口角をあげる。
南は一瞬だけそのルイの表情を見るも、すぐにその視線をスープへと移すのだった。
そんな南を、ルイはただじっと見つめていた。