あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
「きみは…お母さんの側にいてあげなくていいのかい?」

坂口先生の言葉に黙って首をふった。

「そっか…。」
大きな手が優しく俺の頭を撫でた。

「あっ!パパお兄ちゃんなかせた!」

背中に隠れていた女の子が正面に来て俺にぎゅっと抱きついてきた。

いつのまにかまた頬を涙が伝っていた。

頭にのせられた大きな手が親父と重なり悲しくなり、あぁ、母の命もそう長くはないのだろうそう思うと涙が溢れてきた。

一人っ子の俺は独りぼっちになるのだとむしょうに寂しくなった。
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