あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
幸い、颯馬の双子の妹愛美ちゃんは医師を目指し、弟の涼二くんも医師志望だった。

颯馬のお父さん、虎太朗さんも
「颯馬、病院のことは気にするな。
やりたいことやればいい。
ちなみに俺は警官になるのが子供の頃の夢だったぞ?

医者になったのは、葵と同じ高校に転校したくて、親父とじぃさんに我が儘いったんだ。
医者になるから葵のそばにいかせてほしいって」

虎太朗さんはそう言うとチラリと私を見てニヤニヤした。

「杏ちゃんは甘い香りが好きだもんな。
俺も、葵の甘い香り好きだったからな。
舐めると甘いんだよな葵。

颯馬も甘いぞ?杏ちゃん。

好きなだけ舐めていいからな」

颯馬の遠ざかっていく背中を見つめながら、虎太朗さんの言葉を不意に思い出した。

「…っ!」

唇に触れた指先が熱くなる。

抱き締められた時の颯馬から漂う甘い香りと懐かしい彼自身の匂い…。

私の一番好きな香りに、胸がぎゅうっと苦しくなった。
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