あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
動けないままでいる私の前を歩いていた颯馬が足を止めた。

前髪を右手でグシャグシャさせると、向きをかえて私のもとに戻ってきて大きなため息をついた。

「はぁぁぁ。

ごめん、ダメだな。
やっぱりまだガキだ俺…。

杏が男といるからヤキモチやいた…」

伸ばされた手が私を引き寄せて優しく抱き締めた。

「ただいま杏。

やっと会えた。

ずっと会いたかった」


再び包まれた甘い香りを放つ颯馬に、私の鼓動が一気に早まる。

「約束どおりいい男になって帰ってきたんだ。

杏の恋人になるぞ?

いいだろ?」

抱き締める腕に力が込められる。

体温の上がった颯馬からはさらに甘い香りはっきりと漂い、その香りにクラクラする…。

弟みたいに思っていた颯馬が、大人びてカッコよくなっていて、こんなにも甘く私に迫る。

思わず流されかけて、近づく顔から慌てて顔を反らし、胸を強く押して颯馬から離れた。
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