あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
どうやって家に帰ったのかよく覚えていない。

我に返って颯馬を突き飛ばして、逃げるように家に帰ってきた。

「ちゃんと明日会社のやつに、俺が医者じゃなくてパティシエだって訂正しておけよ!

一応俺、今有名人だからな」

背中に聞こえた颯馬の言葉を私はこの時大きく誤解していた。


会社の前で堂々と私の恋人だと言わんばかりの行動をした颯馬は、もはや私の会社で有名人となっているだろう。

愛人の次は、年下に貢がせている…きっとそんな噂話で明日からまたしばらく騒がれるのだ。

「頭いたい、、、」

不覚にも、久しぶりに会った颯馬にときめいた自分に、大きく否定すように頭をふる。

「絶対に違うから!

颯馬にドキドキするはずなんてないんだか!」

「ただいま」

帰宅した私を母が怪訝な顔で見つめた。

「颯馬くんは一緒じゃないの?
一緒かと思って夕飯用意してたんだけど」

「一緒じゃない!」

「あらそう。
でも会ったんでしょ?」

「うん…」

「すっかりイケメンくんになっちゃったわよねぇ。
びっくりしちゃった。」

「会ったの?」

「ええ、昼間挨拶にきたわよ。

ほら、紅茶のシフォンケーキ。

杏の好きな颯馬くんお手製のクリームつきよ。」

テーブルにはフルーツとクリームが綺麗に添えられた紅茶のシフォンがお皿にのっていた。






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