あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
「何やってるの、颯馬」

ムッとしながら、就業時間が終わり慌てて外に飛び出すと

「ん、迎えにきた」

としれっと言い、私の手をとり歩き出す。

恋人繋ぎで指を絡ませられて、見上げた横顔は嬉しそうだった。

「杏とずっとこうしてデートしたかった。
向こうにいる間それだけを楽しみにしてた」

颯馬は昨日からとにかく甘い。
言葉も私への接し方も、大人びたその横顔は三年間の私の知らない彼で、ドキドキしはじめて悟られたくなくて颯馬から目をそらす。

「でも……

昨日から怒らしてばっかだよな俺…

笑顔が見たいのに、一人で舞い上がって。

空回りしてるよな。」

握られた手に力が込められたので、もう一度颯馬を見上げると、寂しそうに微笑む彼と視線がぶつかった。

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