あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
「顔、赤いけど暑い?
少しエアコンいれようか?」

「ううん、大丈夫。

風、気持ちいいからこのままがいい」

運転している横顔を盗み見ていると、すっと伸びてきた手が私の手を握った。

「昨日はよく眠れた?

俺は楽しみ過ぎて、あんまり寝れなかった」

無邪気に笑う顔は可愛くて、やんちゃな昔の私のよく知る颯馬の顔だ。

少しの沈黙のあと、握られた手に力がこめられ、笑顔から眉毛を下げて、申し訳なさそうに口を開いた。

「また…しばらくあんまりゆっくり会えそうもない。

ごめん、杏。

十月、十一月とウェディングケーキの予約がびっしりで、クリスマスケーキも始まる。

イブは無理だけど、二十五日は時間作るから二人でゆっくり過ごそう。

だから、今日はたくさん杏を充電させて?

俺もいっぱい杏を甘やかすから」

握られた手を親指が優しく撫で回す。

こそばゆくて、指先から体温が上昇する。
< 65 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop