あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
この日の業務を無事に終えて、会社の入り口を出ると、昔から変わらないすらりとしたイケメンの圭吾が待っていた。

走りよって思わずその腕に抱きついて彼に甘えるのは、小さな頃から変わらない私の行動だ。

そんな私を目を細めて優しく見つめて頭を撫でてくれるのも昔から変わらない彼の仕草だ。

小さな子供が甘えている仕草を、私はこの年になっても続けている。

圭吾と隼人おじさんとパパは、私にとっては特別な人たちなのだ。

「杏、お疲れ様。
久しぶりだな。いい人はできたか?」

毎回会うと必ず圭吾は私にそう聞く。

「圭吾と隼人おじさんとパパにこんなに溺愛されてたら、いい人なんてできるわけないでしょ!」

苦笑いしながら圭吾の腕に腕を絡めて歩きだす。

彼からはほんのりと消毒薬の香りが漂っている。

私の慣れ親しんだ香りにほっと安心する。

近くのパーキングに停めていた車に乗り、私たちはイタリアンのお店に入った。

仕事の話や家での出来事など彼はいつも穏やかに私の大好きな笑顔を向けて聞いてくれる。
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