あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
会社のそばの小さな洋食のお店。

お昼には少しだけ早い店内は、まだ空席がたくさんあり、私は冴島所長の後を黙ってついて歩いていた。

「悪かったな。付き合わせて。
ごちそうするから、好きなもの食べてくれよ」

先程まで怖い顔で睨んでいた目の前のイケメンが、表情を崩して柔らかく微笑んだ。

「あっ…先程は大変失礼いたしました。その…あまりにも印象が違ったのでわからなくて…」

顔が赤くなるのを感じながら頭を下げる。

「あぁ、こっちこそ悪かった。

白衣に眼鏡が俺のトレードマークだからな。

わからなくて当然だよな」

そう言って眉毛を下げた。

「でもちょっとショックだったんだぞ」

「えっ?」

「冴島製薬の受付嬢は一見クールだが可愛くて、一度会った人物は忘れないって会社の内外問わず有名だからな。

顔はおろか名前を聞いてもピンときてもらえなくて、そんなに俺って存在薄かったのかって。

こんなにイケメンなのにってさっきは正直落ち込んだ」

屈託なく笑う目の前の人物に困惑する。

誰かとよく似た雰囲気をかもしだしている我が社の御曹司をじっと見つめながら思考を巡らせる。

あぁ、そうだ。

この人、圭吾に似てるんだ…。

考えが行き着いた途端、私の心臓がとくんと跳ねた。
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