あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
「以前秘書の話がきたとき断っただろ。

あれは直哉が君の仕事ぶりと君に一目惚れして側に置きたくて、ごり押しで通そうとした人事異動だったんだよ」

ニヤニヤしながら、不意にそんな話をされてどう返答するべきか困って目を泳がせた。

「次期社長のアイツの秘書になりたがる女がたくさんいるのに、あっさり断った女に俺も興味があってね。

だから今日、無理矢理ランチに誘った」

口角を上げてにやりと笑う冴島所長に、じっと見つめられて、その切れ長の瞳に吸い寄せられたように目が離せない。

この人からは、私がよく知っている消毒薬の微かな香りが漂っている。

タバコや香水の香りはまるでしない。

頭の中で警戒音が鳴り響く。

この男に近づいてはいけないと。

それでも、私の嗅覚が目の前の男に興味を持ちはじめていた。
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