あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
「んっっ!」

大きく目を見開き、慌てて離れようともがいたが、しっかりと押さえられた顔は動かすことができず、腰を強く引き寄せらるて離れることができない。

「やっあっっ…」

抗議の声は喉の奥に押し込められ、こじ開けられた口からは、熱い舌が差し込まれて口内をゆっくりと味わうように動き回る。

あっという間に絡めとられた舌は、思いのほか甘く熱く私の身体に熱を与える…。

力が抜けていく身体をしっかりと抱き締められて、存分に口内を味わった唇はゆっくり離され、唇から唾液が流れ落ちた。

「わかったろ?翔平。

杏は俺の女なんだよ。

いいな、二度と手出しするな!

直哉にも伝えておけ!

次期社長なら社長らしく、会社を考えて結婚相手を選べ!

欲しいものを全部手にいれるのは虫がよすぎる。

社長の座は直哉にくれてやったんだ!

杏は、杏だけは直哉には渡さない!」


もう一度近づいた顔は、角度をかえて何度も何度も優しく口づけを繰り返す。


「くっっ!!

恭一!!その女お前にお似合いだ!

N 社のご令嬢との縁談をすすめる!

邪魔したな!」

朦朧とした意識の中、遠ざかっていく革靴の足音が聞こえる。


甘い口づけは、いつのまにかまた深いものへとかわり、私はその甘くて熱い舌に翻弄されていた。
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