あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
「からかわないで…ください…」

先程から起きている一連の出来事に思考が追い付けずにいた。

所長の突然のキスや副社長や中川さんの言っていたこと…。

このままだと晒名総合病院や颯馬の未来を私が奪うことになるのかもしれない…

ぎゅっときつく握りしめた手は、血の気を失い白くなっていた。

「悪かったな。
さっきは突然翔平が現れて。
来るのが遅れてすまなかった」


エレベーターで地下に降りると、所長は私をそっと車の助手席に下ろした。


「 翔平の言葉は気にするな。

何があっても俺は、杏と杏が大事にしている人たちを必ず守る。

とりあえず時間がない。

詳しいことは行きながら話す」

私を守ると言っているこの私の心をざわつかせる隣の男はいったいなんなんだろう…。

聞きたいことはやまほどあった。

運転する綺麗な横顔を、私は黙ってじっと見つめていた。

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