あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
知らなかった。

颯馬が帰国したなんて…。

晒名総合病院の医院長を父親にもち、母親はパティシェのあおちゃんで私たちは兄弟のように育った幼馴染みだ。

四つ年下の颯馬は医者になるか悩んだ末に大好きなお菓子作りの道に進み、二十歳の時にフランスに留学した。

「杏、フランスから戻ったら俺が杏の恋人になるからそれまで待ってろ!いいな。いい男になって戻ってくるからな!」

そういっていなくなったのは三年前だった。

颯馬は子供の頃から私を一途に追いかけてきていた。

私はそんな彼を可愛い弟としか見ていなかった。

父親によくにた長い睫毛で、中性的で女の子と見間違うような綺麗な顔をした彼に私は時には我が儘をいって甘え、無理をいい、男として意識したことはない。

颯馬が留学する前にいい放った言葉ですら、私は本気にはしていなかったのだ。
< 9 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop