あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
社長と副社長の姿は会場前方にすぐに見つけた。

N社の社長と傍らにはすらりとした美人の女性が立ち、にこやかに談笑しているのが遠目でも伺えた。

私の腰を抱いたまま会場に足を踏み入れた恭一は、その一際目立つ顔立ちに瞬く間に注目を浴びた。

女性たちの視線が突き刺さるのを感じて寒気がする。

私たちは真っ直ぐに彼らを目指すと、真っ先に気がついた副社長が腰に回された手を一瞥して拳を固く握り、恭一を鋭く睨み付けた。

そんな怖い顔をした副社長を見るのは初めてだった。

いつも柔らかい笑顔を浮かべていて、恭一ほどではないが、それなりに整った顔をしていてイケメンの部類には入るだろう社内の女性からは人気がある。

今まで好意らしいものをぶつけられたこともなければ、親しく会話をしたこともない。

恭一の話は作り話ではないのかと疑ってもおかしくないが、中川の言葉が恭一の話を裏付けていた。
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