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6.焦れ焦れバージンロード

(ダメだ、集中できない……)

私は大好きな丹羽熊五郎先生の小説を読みながら、ひたすら悶々としていた。

私が今読んでいるのは、丹羽先生が江戸時代に実在した女商人を描いた人気シリーズ、“お静の勘定帳”の最新刊だ。

2か月前に購入してから本棚の中ですっかり埃をかぶっていたのを引っ張りだし、ちまちま読み進めているものの、内容はちっとも頭に入ってこない。

ソファの上で体育座りをして文庫本を開いている私の隣には、同じように読書に励む慶太が寄り添っている。

ソファテーブルには沖縄のガイドブックが3冊も並べられ、慶太はそのひとつひとつにくまなく目を通していた。

「それ、わざわざ買ってきたの?」

「うん。そろそろ旅行の計画を立てないといけないかと思って」

慶太は気になったページの端を折っていく。ページを折りすぎて、背表紙がうんと膨らんでいる。

……どうやら、慶太は沖縄旅行が楽しみで仕方ないらしい。

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