シュガーレスでお願いします!
派手な結婚式は不要だということは、結婚前から互いの意見が一致していた。
親族だけを招いて挙式と食事会だけやろうか、どうせ休暇をもらうならついでに新婚旅行もまとめて行っちゃう?なんて思いつきで言ったのを、実際に行動に移したのは慶太だった。
双方の親族に連絡を取り、日程が決められ、あれよあれよという間に、3泊4日の挙式食事会つき新婚旅行の開催が決定されていたのである。
「行きたいところがあったら、チェック入れといてよ」
「うん。ありがとう」
丹羽先生の新刊をソファに置き、手渡されたガイドブックのページをぱらぱらとめくっていく。
そうしている間にも、私は横目で慶太の様子を窺うのであった。
(……おかしい)
いつもだったら、頼んでもいないのに肩に手を回してきたり、膝小僧をくすぐってきたり、構い倒してくるのに今日はその気配が全く感じられない。
ものは試しにと左足でチョンチョンと奴の足の甲をつついてみる。しかし、慶太はものの見事に足を引っ込め、私との接触を華麗に避けたのである。