シュガーレスでお願いします!

「どうかした?」

慶太はソファテーブルに置いてあったマグカップを手に取り息を吹きかけると、涼しい顔でコーヒーを喉に流し込んだ。

あれ?節度を持てと言ったのはそっちだよね?もしかして構って欲しいの?とでも、私を嘲笑っているかのよう。

……おそらくわざとだ。

多分、私がチラチラと慶太の様子を気にしているのを分かっていて、あえて知らん顔をしているんだ、この男。

だんだんと慶太の魂胆が分かってきて、むっと眉をしかめる。

「ううん。なんでもない」

音を上げるどころか余裕すら感じられる慶太の態度が悔しくなって、ガイドブックに視線を戻す。

(なによ。余裕ぶっちゃって……)

慶太の一挙手一投足に注意を払う私とは対照的に、悠然と構えられると、ついイラっとさせられる。

俺は別に平気だけど?比呂こそ我慢が足りないんじゃない?

決して口には出さないが、事あるごとに目線で訴えてくるんだから、始末に負えない。

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