シュガーレスでお願いします!

挙式が無事に終わるとホテルのバンケットルームを一室借り、親族を一堂に会しての食事会を催す。

新郎新婦含め全員でひとつのテーブルを囲むと、想像以上に距離が近く自然と話が弾んでいく。

「おめでとう、ふたりとも」

「ありがとうございます」

慶太の御両親からお祝いの言葉をもらい会釈をする。

地方で会社員をされている慶太のお義父さんと専業主婦のお義母さんは、息子の結婚式を相当楽しみにしていたらしい。

「比呂さんのようなしっかりしたお嬢さんと結婚できてやっと安心できるわ。本当に昔から慶太はケーキ以外のことは無頓着で……」

30歳を過ぎても浮いた話のひとつもない一人息子ことで相当気を揉んでいたのか、お義母さんは慶太そっくりの目元にうっすらと涙を浮かべていた。

「いえ……。しっかりしているなんて、とんでもないです!!」

私はお義母さんのお世辞を謙遜で返した。

いや、実際のところ私がしっかり者なら、この間のように前後不覚になるまで深酒したりしない。
< 124 / 215 >

この作品をシェア

pagetop