シュガーレスでお願いします!
7.デート日和
あれは何度目のお誘いの時だっただろうか。
「きっと私の前世は海の生き物だと思うんだよな~」
私は至極真面目にそう言うと、ネギマのネギを串から剥ぎ取り口に入れ、グラスに注がれたビールを飲み干した。
「比呂先生はまた突拍子もないこと言うよな」
有馬さんは飲みかけのビールのグラスをテーブルに置くと、喉の奥でクックックと低く笑った。
こちらは大真面目で言っているのに突拍子もないと笑われ、むうっと頬を膨らませる。
『連絡先、教えてくれる?』
一杯だけの付き合いのつもりで、飲みに行ったのがすべての始まりだった。
私のお願い通り事務所の前での待ち伏せをやめてくれた有馬さんだったが、代わりに連絡先を聞かれ、定期的に飲みに誘われるようになった。
仕事帰りに待ち合わせして、有馬さんに連れていかれるのはいつも決まって、くだけた感じの居酒屋だ。
今日は焼き鳥。前回は和風イタリアン。その前は海鮮居酒屋だった。
これが、いかにもデートですって雰囲気のフレンチなんぞに連れていかれた日には、私は裸足で逃げ出していたことだろう。
なんだかんだ言って有馬さんの誘いを断らないのは、彼が連れてきてくれるお店がことごとく美味しいということもあるけれど……。
有馬さんと一緒に飲むのって、意外と楽しいんだよな。