シュガーレスでお願いします!
私はいい加減しつこい慶太を背中から引っぺがし床に捨て置くと、ルームウェアのロングワンピースに着替えた。
髪をヘアゴムでくくり、エプロンをつけてキッチンに立つ。
「今日のご飯なに?」
「カレー」
フランス滞在中に日本の食べ物が恋しくなったのか、カレーが食べたいと何度もメッセージを送ってきたのは慶太の方である。
仕事が忙しいのにかまけて、料理はほとんどしないが、苦手でもない。
スーパーで仕入れてきたジャガイモと、ニンジン、玉ねぎの皮をむいて、適当な大きさに刻んでいく。実に簡単な作業だ。
……誰かさんの邪魔が入らなければの話だが。
「慶太」
「何?」
「邪魔」
痺れを切らした私は、静かに慶太にお小言を言うのであった。
夕飯を作る間ぐらい、大人しく待っていられないの?
慶太はひとがおいそれと動けないのをいいことに、背後からピタリと身体を密着させ、私をすっぽりと己の腕の中に収めてしまったのである。