シュガーレスでお願いします!
「ごめーん!!どうしても一翔が比呂に絵本を読んでもらうってきかなくて~」
お姉ちゃんは両手を合わせ、本当に申し訳なさそうにひたすら私に謝るのだった。
折角一緒に旅行に来ているのに満足に構ってあげられなかったから、一翔くんもへそを曲げてしまったのだろう。
「わかった。すぐそっちの部屋に行くから待っててくれ」
お姉ちゃんが部屋に戻っていくのを見送ると、部屋の中ですべてを聞いていたであろう慶太に視線を送る。
「ちょっと行ってくる」
「わかった」
私はバスローブから洋服に着替えると、自分たちの部屋を出て、ホテルの廊下をひとりで歩いていく。
(熱い……)
沖縄の夜風が中途半端に燃え上がった身体を静めていく。
それでも、慶太に触れられた唇だけは最後まで余韻が消えなかった。