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8.波乱につぐ波乱
わずかばかりの慶事休暇を楽しんだ後、私はいつも通り奥寺法律事務所へと出勤した。
「沖縄土産のちんすこうです。皆さんでどうぞ」
私は個包装になっているちんすこうを箱からとりだし、ひとりひとりのデスクに置いていった。
奥寺法律事務所では旅行のお土産は個別に配り終えた後に、共有のお茶菓子ボックスに入れることになっている。
「あら、ちんすこう?てっきり比呂先生は甘くない食べ物を買ってくるのかと思っていたのに」
香子先生はお土産のちんすこうをしげしげと眺めながら、意地の悪い姑のようなちょっとした冗談を口にした。
「味は保証します。なんたって有馬慶太のお墨付きですから」
お姉ちゃんと、お母さんがどうしてもとねだるものだから、慶太に試食コーナーにあるお菓子を片っ端から試食してもらい吟味した結果、このきび糖のちんすこうが一番おいしいという結論となった。