シュガーレスでお願いします!
「新婚旅行、楽しかったの?」
阿久津先生の父親ぶりを想像するのに気を取られていたせいで、ちんすこうをかじる香子先生に旅行の感想を求められて咄嗟に反応が遅れる。
「え、あ、はい。海が綺麗で……」
「写真は?もちろん、ウェディングドレス着たんでしょう?」
香子先生にせがまれ、私はカメラマンに徹してくれた睦月さんに撮ってもらった写真を携帯で見せた。
「あら~。良く撮れてるわね」
一翔くんが生まれてからすっかりカメラ好きになり、自慢の一眼レフでとってもらった写真は、被写体はともかく、沖縄の海が良く映える素晴らしい出来栄えだった。
香子先生が写真に次々に目を通していくその頃には、話を聞きつけた遠藤さんやら君島さんも寄ってくる。
「わあっ……!!比呂先生、綺麗です!!」
「本当!!素敵……!!」
「ありがとう」
手放しに褒められると、たとえお世辞でも嬉しいな。
仕事の合間だというのに土産話に花が咲く中、電話の呼び出し音が事務所の中に鳴り響いた。すかさず遠藤さんが輪の中から抜け、受話器を手に取る。