シュガーレスでお願いします!
「呑気なことを言っている場合か?無言電話だけならともかく、これは事件になるぞ」
五十嵐先生は勝手に犯人像を分析し始めた私から写真を取り上げると、元通りに茶封筒にしまったのだった。
「比呂先生はこれからひとりで外を出歩くのは禁止ね」
事態を重く見た香子先生のその後の行動は素早かった。
「阿久津先生、ポストに監視カメラつけてちょうだい。五十嵐先生は、知り合いの刑事さんに根回しをお願いします。上野先生、業務中は常に比呂先生に同行してください。上野先生のクライアントは代わりに私が引き継ぎます」
香子先生が次々と指示を飛ばすと、各自心得たように頷いていく。
「大丈夫よ、比呂先生。奥寺法律事務所のメンツにかけて犯人は絶対に見つけ出してみせるから」
香子先生は私を安心させるように、ニッっと唇の端を上げて笑いかけた。
口では何も言わないけれど犯人を見つけて、しかるべき罪状を請求するまでがセットに違いない。
私が犯人なら『法廷の女豹』の異名を持つ香子先生は絶対に敵に回したくない。