シュガーレスでお願いします!

「まあまあ、そんなに目くじら立てなくても……」

「いいんです!!上野先生、いつもふざけてばかりで……。そんなだから……私……」

「遠藤さん……?」

「いいえ、なんでもありません」

遠藤さんにしては珍しく歯切れが悪い。

上野先生と何かあったに違いないのだろうけど、私が安易に口出しても良いのだろうかと気を揉んでしまう。

遠藤さんは打って変わって、私に尋ねるのであった。

「あ、そうだ。事務所で食べるクリスマスケーキをsoleilで買おうと思うんですけど、もう予約の受付してます?」

「ああ、それなら11月から受付するって言ってた」

soleilのクリスマスケーキは例年、他のパティスリーとは違う趣向が凝らしてあり、受付開始と同時に予約が殺到する人気振りらしい。

既定の数に達し次第受付を終了するからご予約はお早めにと慶太から言付かっている。

「比呂先生にはケーキの代わりにコーヒーゼリーを予約しておきますね」

「ありがとう、助かります」

シュガーレス体質の私もクリスマスを平等に楽しめるように気遣いを忘れない遠藤さんである。
それにしても……。

(慶太ったら……)

上野先生にガンを飛ばすなんて、けしからんような……嬉しいような……複雑な気持ちになる。

数分後、上野先生の予想通り『迎えに行く』と慶太からメッセージが返ってきたのは言うまでもない。

< 160 / 215 >

この作品をシェア

pagetop