シュガーレスでお願いします!
2.シュガーレスな彼女の悩み
離れていた時間を埋めるように身体を重ね、ひと心地ついたのは深夜を回った頃。
それから、うつらうつらと浅い眠りを繰り返すこと数時間、気怠さの残る身体で寝返りを打てば、隣で寝ていたはずの慶太の姿がなく、うっすらと目を開ける。
耳を澄ますと、キッチンの方から下手くそな鼻歌が聞こえてきた。すんすんと鼻を鳴らせば、カレーのスパイシーな匂いが辺りに漂っている。
フランスから帰国したその夜にあれだけ動いておいて、私よりも先に起きてカレーを作るなんて、慶太の体力は底なしなのか。
これがデスクワークの多い弁護士と、身体が資本のパティシエの差なのかと愕然とする。
パティシエは見た目の華やかさとは裏腹に、肉体的に相当ハードな職業だ。
ケーキに使う小麦粉や砂糖の袋は軽い物でも数十キロはあるため腰痛は必至だし、泡立て器でクリームをかき混ぜればすぐに腱鞘炎に悩まされる。
細身に見える慶太の身体にしっかりとした筋肉がついていることは、毎日のように彼の一糸まとわぬ裸体を拝んでいる私が一番よく知っている。