シュガーレスでお願いします!
(お腹……空いたな……)
慶太のせいで、結局昨夜は夕飯抜きになってしまった。お昼に食べたサンドイッチはとっくの昔に消化され、跡形もない。
お腹が空いて動けない上に、押し寄せてくる眠気にも勝てない。
私は考えあぐねた挙句に、睡眠を優先させることにした。
寝室の壁時計は午前6時を指している。
あと、1時間は寝ていられる喜びを胸に布団を頭から引っかぶり、二度寝を開始する。
「比呂、起きて」
慶太はそんな怠惰な私の身体を優しく揺り動かすのだった。
私は目を擦ると、ベッドの端に腰かける慶太のシャツを掴んでこう言った。
「けーた……。お願い……」
あと5分だけ寝かせてと頼んだつもりだったのに、何を勘違いしたのか慶太はほんのりと頬を染め、嬉々としてベッドに潜り込んできた。
「おねだりした比呂が悪いんだからな?」
「……は?」
おねだりなんかしていないという私の主張は、あっという間に慶太に封殺された。
頼んでもいないのに昨夜の続きを始めた慶太に向かって、アホ!!バカ!!と罵詈雑言を浴びせ掛けたが効果は全くなかった。
結局、私は始業時間ギリギリで事務所に駆け込む羽目になったのだった。