シュガーレスでお願いします!

「慶太を好きになればなるほど自分が自分でなくなっていくようで怖かったんだ」

最初のきっかけこそアレだったけれど、どんどん慶太を好きになってのめり込んでいく自分を自覚するたびに心のどこかでブレーキがかかった。

今でも怖いかもしれない。でも、今の私はそれ以上に怖いことがあることを知っている。

「私、もう少し自分の気持ちに素直になってみる」

最初からこうすれば良かったんだ。

慶太なら素直になれない私も、素直になった私も、きっと受け止めてくれる。

「本当はケーキが食べてみたいって思っていること、慶太が気づかせてくれたから」

本物のケーキは食べられなくても、慶太がくれるケーキみたいに甘い愛情は受け入れられるはずだ。

シュガーレスなのは、私の体質だけで十分。

結婚生活くらいは砂糖がたっぷりでも構わないだろう。差し引きゼロできっとちょうどいい塩梅になる。

慶太は私の顎に手をやり、顔を上に傾けた。私はそれに応えるようにゆっくりと目を瞑った。

それはバージンロードでしたよりも艶めかしく、長いキスだった。

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