シュガーレスでお願いします!

「遠藤さん、少し聞きたいことがあるんだが……」

しばしば、男性からお呼びがかかる遠藤さんになら、この堕落した結婚生活について相談できるかもしれない。

誰にも聞かれないように手をメガホンのようにして、彼女の耳元でごにょごにょと結婚生活のあれやこれやをありのまま伝える。

「エプロン?」

遠藤さんの口から危険な単語が出てきて、私はシッと唇に指を立てて、静かにするように目で訴えた。

阿久津先生あたりに聞かれたら、頼んでもないのに余計な首を突っ込んできそうだ。

「あー……。それは、まあ……。ひとそれぞれ嗜好があるから……私には何とも……」

遠藤さんはよほど困ったのか、苦笑いで誤魔化した。

目が泳いでいた彼女の反応で、慶太が言っていたことが口から出まかせだということがわかる。

(ああ、もう……!!やっぱりっ!!)

私は落胆を隠すように顔を手で覆い、自分の無知をひたすら恥じた。

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